2017年5月9日火曜日

嫁の妊娠10 ~助成金は出るが節約作戦の大惨事~


嫁が安定期に入り、そろそろ出産費用などの資金計画も考えなくてはならなくなってきた。

嫁が色々と調べた結果、助成金はもらえるのだが、例えば10月出産の場合、3カ月後辺りになるとのこと。つまり、一時は立て替えないといけないので、節約を始めようと思った。

まず始めたのが、美容院にかかる費用。

と言っても、ボクはかなり伸びるまで美容院には行かない。

前回髪を切ったのは、11月の終わり。もう5カ月以上も経つ。

最近は長澤まさみぐらい伸びてしまったので、さすがに切りに行く。

ただ、以前から思っていたが、なぜ美容院のカット代はこんなに高いのだろう。

場所によってはカットだけで5000円以上とるところもある。

特にボクの住む東京都心では、5000円なんてざらだ。

それにカラーだのパーマだの付け足したりなんかすると、一気に10000円は超える。

なので、ボクはいつもカット+シャンプーがついた1800円の店へ行っていた。

かなりお安いが、ある程度はちゃんと切ってくれる。

しかし今は100円でも節約していかないといけない。

もっと安いところはないかと検索をかけた。

すると、ボクのパソコンは驚きの価格をはじき出した。

カットのみだが、980円。

オジサンたちがいく1000円カットを上回る安さ。

しかも、その980円の美容院は、家から自転車で行ける距離にもチェーン店があった。

カットだけだが、仕事のない午前中に行って――と思いながら詳しく店の情報を見ていると、さらに驚愕の数字をボクのパソコンがはじき出す。

12:00~14:00はサービスタイムとのことで、980円のところが690円になるという、謎の割引率。およそ30%OFF。

これは行かない手はない。

曲がりなりにも〝美容院〟をうたっていてのカット690円。

どんな店なのか――。

タイムサービスの12:00ジャストに入店したのに、すでに4人の先客。

年配のオジサン……いや、おじいさん2人と、オバサン……いや、おばあさん2人が座っていた。

店内は理髪店と美容院の折衷案みたいな内装。

カット席は2席。シャンプー台は2台。美容院のオバサンも2人。

2、という数字が好きらしい。

名前を書けと言われ、受付に名前と入店時間を書く欄があった。

ボクは12:00ちょうどに入ったはずなのに、すでに12:00に入った人が4人、記されていた。

そんなはずはない。ボクは3分前から店前でスタンバってジャストに入った。

つまり、今ボクの目の前に座っている4人の初老の方々が、12:00前に入ったにも関わらず、タイムサービス料金でカットするために〈入店 12:00〉と記していた。

こういう作戦もありなんだな、と思いながら、順番を待つ。

なかなか素早いカットでサクサクと初老をこなしていく。そしてボクが30分ほど名探偵コナンを読んだところで、名前を呼ばれた。

カット席に座ると、「どういう感じにしましょうか?」と言われ、「上の髪は残しつつ、サイドと後ろを短くサッパリさせて、イイ感じにまとめてください」と、いつも美容院で言う注文を言った。

さすがに大きなミスはないだろうと思いながら、途中だったコナンを読み始めた……!?

ふと鏡を見ると、なんと、残してと言った上の髪をサイドの髪と一緒にまとめて、ジョギン!

「ちょちょちょ! なんで上の髪も切ってんすか!?」

オバサンは不思議な顔をして、ボクをキョトンと見つめている。

「え? ああ、サイドっていうから、全体的なサイドかと思いました。でも切ってしまったので、どうしましょう?」

しかも客の回転を速くしなければならないのはわかるが、1ハサミの入れ方が多すぎて、完全に取り返しがつかない。

しかしここで怒っても仕方がないので、諦め、怒り、悲しみ、すべてを飲み込んで、とりあえず言った。

「……とにかく、上の髪はヘアー止めで上にまとめてから、サイドと後ろだけを切って下さい」

そこからはなんとか気を付けながら切ってはいたが、恐る恐るなので、ザックリいった逆側がやけに長く残っていたり、後ろはさっぱりさせているのに上の髪を全く切らないので柳の木みたいになっていたり。

ボクは一応、気づくたびに軌道修正する。

ただ、終始、690円なのに文句言ってんじゃないわよ、の空気が凄い。

はーーー、安かろう悪かろう、の純度100%の店だった。

いつも年配の方ばかりを相手にしているからだろう、出来上がったと鏡で見せられたえり足も、ピッチリと、エジプトの地平線のように揃っている。

ハゲたと思われてもいい。

向こう2カ月ほどは、帽子で乗り切ろう。

偶然にもオシャレハンチングを数個持っている。

ホント、職業が作家で良かった。

普通のサラリーマンなら帽子をかぶって仕事などできない。

あとは、身近な人の急な不幸などは本当に勘弁してほしい。

葬式に帽子をかぶっていくわけにはいかないから。


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