先日仕事で大阪の王子動物園に行き、恥ずかしながら人生で初のパンダを見た。
ずっと後ろを向いて笹の葉をバリバリと食っていた。
だからというわけではないが、嫁が一度行ってみたいと言っていた阿佐ヶ谷駅前にある『パンダ喫茶店』という店を訪れた。
表看板にサンドウィッチの文字を発見。
一瞬、パンダの肉を食えるのではないかと期待したが、そうではないらしい。
パンダの提灯をくぐって2階へ登る。
階段を登った正面からパンダ全開の本気の看板。
店内に入ると、感動屋さんの嫁が「すごいね~」と店内を見回す。
少し想像を上回るほどの色々なパンダたちが各所にいた。
10個ほどの2人席テーブル。
店内はほどよく混んでいたが、座ることができた。
早速メニューを開く。この瞬間は何ものにも代え難い。
あった。サンドウィッチの文字。やはりパンダ肉ではなく、
『クリームチーズ・トマト・レタス』
『ツナ・トマト・レタス』
『マヨ醤油チキン・トマト・レタス』
『豚の生姜焼き・トマト・レタス』
の4種類から選べる。ランチセットということで、ドリンク付きで1000円。
入っている具をダイレクトに知らせてくる辺り、どんなお客が来ても対応できるようにしている。
もしくは、いちいち「スペシャルデラックスサンドって何が入ってるんですか?」の質問に答えたくないだけだからかもしれない。
一目見て、2種類には絞られていた。マヨ醤油チキンか豚の生姜焼き。
ちなみに、照り焼きチキンを発明した人はライト兄弟ぐらいすごいと思っている。
チキンに惹かれながらも、豚の生姜焼きという他ではあまり聞かない一品にも惹かれる。
ただ、今日は嫁がいる。2人で1つずつを注文すればシェア出来るんだけどなぁ、と思いながら、何にしたのか聞くと、「ん~とね、キーマカレー!」と、無邪気な声で一刀両断。仕方がない。
というわけで、両断されたどちらを選ぶか……ダメだ。やはり勝てない。豚の生姜焼きは次回に回そう。
マヨ醤油チキンのサンドウィッチとキーマカレーを注文した。
運ばれてくるまで、店内を見回す。
右を向けば、パンダの置物、ぬいぐるみのゾーン。
左を向けば、パンダの形のエレキギター飾りゾーン。
後ろを向けば、靴下や手袋やシールやキーホルダーやスニーカーやトートバッグや傘などなど、パンダグッズ販売ゾーン。
お客に「パンダのモノばっかりこんなにいっぱい、凄いですね~。良く集めましたね~」と言われたい感は否めないが、言わない。ボクはかなり店員と喋るほうの人間だけれども、こういったシチュエーションでは一切無口になってしまう。
相手の言って欲しいことが100%わかって、それを言えば相手が気持ちよくなることはわかっていても恥ずかしくて言えない。
嫁からは「そういうトコ直して」とよく言われる。お母さん、なぜボクをこんな風に育てたの。
先にキーマカレーが運ばれてきた。
玉子などでキャラ弁のようにパンダが模されている。
いや違う。パンダはベースが白で目の周りや鼻が黒い。
「これは、〝ダンパ〟やな」
小洒落たことを言うと、嫁が「ハハハ」と笑う。
いいでしょう。
そしてすぐに、自分の『マヨ醤油チキン・トマト・レタス』が運ばれてきた。
――おわっつ! チェケラッチョ! しくじった。
白いバンズに挟まれていた。
実は、たった1つだけ自分なりのサンドウィッチの定義がある。
〈食パン型のパンに具材が挟まれていること〉
つまり、これはバーガーであって、サンドウィッチではない。
時々ある。バンズで挟んだバーガーなのに、ホットドッグ仕様なのに、堂々と『サンドウィッチ』とメニューに書いてしまう店。
仕方ない。騙されたわけではない。確認しなかった自分が悪い。
今後はこのようなことがないようにします。
白いバンスに挟まれているのは大ぶりの醤油味チキン。
名前の通り、トマトとレタス、そしてマヨネーズがかかっている。
そして申し訳程度に、皿の端っこに固ゆで卵が添えられていた。
さて、照り焼きチキンではない、醤油チキンとはどんなものか。
では一口――――――はい、43点。
悪くはない。好きな人は好きなんだろう。……と書くときは、期待を裏切られたときだなと、自分の筆致の癖に今気づいた。
トマト、レタス、パンは想像通りのモノ。
そしてメインの醤油チキンだが、醤油と塩コショウだけで味付けしているのだろうか、舌に最初に触れる表面の醤油味は濃い。
が、パンとトマトとレタスと一緒にチキンを咀嚼し始めると、その濃い味は一気に薄れ、いや、パンに全て持っていかれる。
巷に出回っているほとんどのサンドウィッチが陥っている、完全に具の存在感がパンに負けている仕様。
「え? だってそれがサンドウィッチってもんでしょ?」感が否めない。
店長が一週間に一度はきちんと試食し、味の改良をしているメニューとは思えない。
定食ではなくサンドウィッチである以上、醤油味に普通のマヨネーズを少量かけただけでは味が足りないのだ。
鶏肉から肉汁が滴るわけでもなく、プリプリになるように焼き方を工夫しているわけでもなく、この味でブランド鶏なわけもなく。
ただ、このメニューは恐らく、惰性で出来たものだろうと自己納得もした。
そもそも、マヨ醤油チキン定食、豚の生姜焼き定食、がある。
それに端を発し、「あ、これサンドウィッチにしてみたらいいかも」との思いつきメニューだろう。
声を特大にして言いたい。定食のおかずとサンドウィッチの具材では考え方と作り方が完全に違うことをわかって欲しい。
定食で食べるときは、チキンを単体で食べ、自分のタイミングで御飯を食べる。
チキンの味だけを味わってから、自分のタイミングでご飯やサラダを食べる。
しかしサンドウィッチの場合は、強制的に全て一緒に食べなくてはならない。
このマヨ醤油チキンに関してはパンが具材の味を吸収するという計算が全くされていない。
定食のおかず感覚でサンドウィッチの具材を作ることは不可能。
今書いた数行は、この店に限らず、全てのサンドウィッチを作る人に聞いてもらいたい。
そう、サンドウィッチはパンと具材の戦いだ。
なんだそれ。
文章が長くなってすみません。
もう自ら行くことはないが、もしまた嫁が行きたいと言ったら、今度は豚の生姜焼きサンドを食べてみよう。
あ、最後にトイレに行ったが、なぜか蛇口がパンダではなく怖いうさぎだった。
『パンダ珈琲店』
TEL
03-3393-5077 AM11:00~PM9:00 /土日・祝日 AM11:00~PM7:00 水曜定休
0 件のコメント:
コメントを投稿