仕事の帰りに、以前から何度か前を通って気になっていた店へ行く。
そう、昼間や夕方には、時折行列にもなっていた店。
オシャレな電飾看板には『しげくに屋 55ベーカリー』と書かれている。
夜の高円寺の路地裏に佇む店の電燈が美しく、思わず足が向いた。
とはいえ、看板の文字デザインにはあまりセンスを感じられなかったが。
ベーカリーということで、もちろんパン屋さん。
閉店時間ギリギリで、外から見るショーウィンドウにはまばらなパンが残っているようだった。
そうそう、ときどきある、店に入ると店員さんが「何にしましょう?」と、店に入る=買うの前提で聞いてくるところもあるが、ボクはそんな店はすぐに出てしまう。どんなに美味しそうなサンドウィッチがあっても。
最高なのは、まったくこちらに関与してこないこと。
特にこの店のように小さい店構えでは、話しかけてくる確率は高い。さらに、閉店間近で売り切りたい、というオプションも付いている。
恐る恐る、頼むからボクから話しかけるまで話しかけないでくれ、とシンジくんばりに心で祈りながら、一歩を踏み出した。
そしてショーウィンドウの前に来て、顔を上げた……良かった。
閉店間近でも、お姉さんは優しい笑顔だけで対応してくれた。
ボクは満を持して声をかけた。
「サンドウィッチありますか?」
と聞く。
想像通りの優しい声が返ってきた。
「あ、ハムカツサンドが最後の残り1つ、ございます」
ほどよく売れ残っている各種オーガニックチックパンの隙間から、ハムカツサンドが顔を覗かせていた。
170円+税。
「よかった。じゃ、それを」
「はい。ありがとございます」
お姉さんがレジへ行ったので、ボクも横歩きしてついていく。
「あの、ハムカツサンド以外のサンドウィッチって、何があるんですか?」
「ウチのサンドウィッチはハムカツサンドの1種類だけなんですよ」
「へぇ~」
会計を済ませ、お姉さんに笑顔で見送られて家路についた。
1種類しかサンドウィッチを置いていないパン屋さん。
サンドウィッチは手間がかかる。パンを作るだけでも手間なのに、そこからさらに作業がいるからである。
それでも、作って売りたいと思わせるほどということ。
1つだけなので寂しいが、まぁ仕方がない。
最後の1つなのだから。
その辺のハムカツサンドのハムよりも2倍~3倍ほど肉厚だ。
カツのお共、キャベツの千切りも挟まれている。
帰り道に歩きながらで申し訳ないが、では、一口――――――はい、22点。
この流れだと、確実に美味しくなくてはならないのだが、どうにもこうにも、申し訳ない。
閉店間際の夜9時に残っていた最後の1つのハムカツサンドであることを凄く考慮してください。
パンはパッサパサだし、キャベツは水っぽいのを通り越してカスカスだし、カツのソースはキャベツやパンに吸われ過ぎてどこかへ行ってるし、全ての水分や油分が蒸発しており、最後は何を食べているのかわからなくなった。
実は、これを書くかどうか凄く迷ったのだが、サンドウィッチのブログを書くと決めたときに、感想は正直に書こうとも決めた。
今度、きちんと作りたてのハムカツサンドを買いに行くと決意して。
『しげくに屋 55ベーカリー』高円寺本店
10:00~20:00(売切次第終了) ランチ営業 日曜営業 TEL:03-5356-7617
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