結婚前から思っていたことだが、女子はとにかく、自分の気持ちを最優先に考える生き物。だと思う。
さらに嫁は、その中でも群を抜いて、気持ちの良し悪しでほとんどを決定する。ガラスのハートというのは嫁のことを言うと思う。
しかし嫁は、ウジウジしている女子が嫌いなのか恥ずかしいのか、表面的にはサバサバ感を出しているので、ボクが気づいていることは言わない。
そしてボクは、たぶん、普通の人よりも群を抜いて、楽観的な性格であり、ほとんどのことは気にしない。心臓がイタリア人だと言われたこともある。
この間の検診のときも――。
先日ブログにもサクッと書いたが、数日前にボクも初同行して妊婦検診に行った。
なんでも、これまでは〈婦人科〉というところで検診を受けていて、その日が〈産婦人科〉で初めての検診とのことだった。
まず、年下なのにタメ口の産婦人科の先生に診察してもらい、エコーで動いている我が子を初めて見たボクは感心し、里帰り出産をする嫁は先生に相談し始めた。
あとから考えれば……、になってしまうが、思い出せば確かにそうだ。
里帰り出産の話を切り出した瞬間、先生の態度が微妙にそっけなくなった。
覚えられない人もいるだろう早口で、里帰り出産のためにやらなければならないことをドバーっと話す。
――次の検診は、里帰り出産をする病院で受けて。
――そのときに性別がわかるかもしれない。
――助成金は自治体ごとで違うし、使えない可能性もあるから、自分でその病院のある自治体に聞きに行って。
――胎盤が少し下がり目なので、20週超えてもそのままだったら里帰り出産はできないから。
――出血の可能性があるからね。
などなど。しかもパソコンの画面を見ながら。
いつの間にかタメ口のレベルも2段階ぐらい上がっている。
すると嫁が、助成金の話を詳しく聞こうと先生に問うたのだが、そっけなさが増した先生は
――だからぁ、そこの自治体に資料も全部持って行って、聞いて。
と言う。
よくわからないが、『とにかく里帰り出産させたくない』の雰囲気というか、オーラが凄い。
そして次に、おばさん助産師さんの問診を受けた。
うねうね髪質のせいでベリーショートにしかできないのだろう、久々にゴリゴリのベリーショートを見た。同じベリーショートでも宮崎あおいとは違う。ベリーさんと呼ぼう。
そのベリーさんの喋り方は、ボクら夫婦があまり好きではない人の話し方だった。
『あー、これやばいかも』と、嫁の斜め後ろに座るボクは心の中でひとりごちる。
ベリーさんは、
――問題は特に見当たらないんだけど……朝ごはん、ちゃんと食べてる? お母さんが食べてるものからしか赤ちゃんは栄養を取れないんだから、ちゃんと食べないとダメだよね。わかる?
――今の段階だと、体重が〇〇キロを目指さないと、赤ちゃんもちゃんと成長できないのよ? わかる?
ダメだ。嫁が何も話さなくなってきている。
ガラガラ、ではない。 ジャー!!! と心のシャッターが降りた音が聞こえた。
そして数日後の今日。ボクはそれでも、やはり朝食は食べた方がいいと思い、おにぎりを作ったり、オレンジを剥いたり、と、朝に少しでも何か食べられるようにしてみた。
今日は嫁が先に出かけたので、出るときに優しく、――出来るだけ食べるようにしような――、とも言う。ボクが嫌われようが、いい。嫁と赤ちゃんのためなら憎まれ役にもなる。
すると、1時間後にやはりLINEが来た。
――この前の検診はストレスでした。朝ごはん朝ごはん言わないでください。うんざりです。
ベリーさんの言い方が嫌で、ストレスだったので、ベリーさんに言われた「朝ごはんを食べて」に反抗したい精神。
男から見ると凄い理由だが、とにかく今は、朝ごはんはかなり大事な時期。
嫁とまだ見ぬ我が子が健康に暮らせるなら、憎まれ役なんてなんでもない。
ボクは心臓がイタリア人だから。
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